>>シンゴ
「マジで?マジで??」
『シンゴ君、疑い過ぎだよ。本当だよ。さっき篠塚先輩から連絡があって、校舎を1つ越えた先が穴場だってさ。』
「よっしゃ!それじゃ俺はそこへ行くぜ!…良とかもそこに行くのか?」
『いや、良君は行かないってさ。何だか他に行くところがあるらしくて…。』
「ふぅん…?」
突入してから時間が経ったというのに、俺はまだ正門付近で尻込みしていた。周囲の熱気と戦闘の激しさについていけず、木々の陰に潜んでいるのだ。
「それじゃ、俺はこれで。」
『シンゴ君、怪我しないようにね。』
そう言って水鏡は、無線機から消えた。
「さて、と…問題はそこまでどうやって行くか、だよなぁ…?」
一張羅の和服の乱れを直しながら、俺は足りない知恵を絞った。俺は別段足が速い訳でも無いし、ましてや身軽な方でも無い。ただ走るだけじゃ無理だ。
「いざとなったら、心獣を使えば良いけどよぉ…。」
何せ俺は心獣のエネルギー消費量が半端無いから、連発出来ないのだ。無駄に突っ込んでも無理と見た。
「はぁ…どうすりゃいいもんかねぇ…。」
俺は半ば諦めムードのまま、背後に聳え立つ大木に腰かけた。その時、ブロックか何かが外れる音と共に、俺の体は落下した。声にならない悲鳴を上げながら、そのままコンクリートの床に叩きつけられたのだ。痛む背中を擦りながら、俺は周囲を見渡した。
「ど、どこだよ、ここ…?」
ふと上を見上げれば、そこは確かに俺が先程までいた場所だった。どうやら俺は水路か何かに落っこちたらしい。コンクリートに四方を囲まれたその水の通路は、いくつかの隙間から太陽の光を飲み込んでいた。
「水路か…そういや俺たち、水路の中から侵入を図ったっけな…。」
俺の脳裏に浮かび上がってきたのは、大量の水に流されながらマンホールから這い出るように脱出した、あの日の屈辱だった。思い出すたびに、俺は腹が立つ。あの時どうして俺は、この壁を破壊する事が出来なかったのか、俺はその事ばかり考えていた。
「こうなったら、意地でもこの水路から侵入してやる!絶対にこの学校の水路に勝ってやる!」
歯を強く食いしばりながら、俺は腰に携えていた木刀を手にし、小走りで通路の中を駆け出していった。
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