有限会社モノポリアは、ひっそりといなくなった。近所の噂では、借金滞納で夜逃げしたと言われている。
しかし、私たちは知っている。彼らが正義に屈し、負けた事を。
「くそぉ…エルミナスめ! 私の自慢のキメラたちを!」
悔し涙を流しても、事態は良い方向へ流れない。街外れの廃屋の中、何度もトタンの壁を殴るマナギの腕を、誰かが掴んだ。
「やめておけ。この手は大事な商売道具だろ?」
「…あ、ウィルさん?!」
彼の前に、予想だにしなかった人物が現われた。初期のモノポリアで同僚だったウィル博士がそこにいたのだ。
「東洋には、光と闇によって世界が構成されている、という価値観があるらしいね」
彼はすぐそばの廃材に腰掛け、煙草を吸い始めた。
「私たちは煙たがられてきた。その研究分野に。学術的好奇心の分からぬ社会の歯車に、弾き飛ばされた」
ふぅと吐き出された紫煙が、廃屋中に広がっていく。
「もう1度尋ねる…君は光になるか? それとも闇になるか?」
マナギは震えた。
「その言葉…俺がモノポリアに誘われた時…映像の中でボスが言っていた…!」
「どうやらこの世の中…トップの人間は表に出なければならないらしい…新生モノポリアとして、相応しい体制だと思わないか?」
「…はい!」
あのボスが目の前にいる…マナギの震えは治まりそうになり。とはいえ彼も、まさかこの人がボスだったとは思っていなかったらしいが。
「この近くに馴染みの飲み屋があってね…今日は飲み明かさないかな? あの頃のように、酔いつぶれてしまいたい気分だ」
「行きましょう、是非!」
薄汚れた服を払いもせず、2人の男は歩き始めた。新しい組織を作り上げるため、お互いの友好関係を深めるため。


「一応失業手当は出しておこう」
「ありがとうございます!」
だから悪の組織『モノポリア』の福利厚生は変に充実し過ぎだって(汗)。

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