エルミナスの体から、考えられないほどの電気が流れ始めた。それらは放電を起こしながら、彼女の両手に集まっていく。
「見える? 私とシデンの怒りが、あなたたちに苦しめられてきた人たちの怒りが、ここに集まっているわ」
まるで巨大なハンマーか何かを握るように、両手を握り締めるエルミナス。2つの電気が合わさり、スパーク音が激しく鳴り始めた。
「裁かれなさい。あなたちには、それを受ける義務があるの」
彼女は微笑んでいた。いわゆる『勝利の笑み』だ。どう考えても自分が勝つ事に、心にゆとりが出来た証拠である。
それは、たとえ奇跡的な幸運がルーシェルに降りかかってきたと仮定しても、という意味でもある。絶対なる自分への信頼…彼女はそれに包まれていた。
「最期に教えて欲しいわ」
エルミナスの電気は既に、彼女の体の何倍にも巨大化していた。付近の電線は共鳴し、バリバリと音を立て始めている。ルーシェルのリングたちも、きっと焼け焦げれば使い物にならない。彼自身も負けを自覚していた。そんな状況で、彼女は口を開いた。
「あなたは誰なの?」
その問いに、ルーシェルは残されたレバーを引き、突然鎧を全て解除した。そこには蛇柄の服を着た、1人の男が立っていた。
「レイトル。形式番号無きガラガラヘビのキメラだ。…はは、ここまで力の差があったら、誰でも笑っちまうっても…」
「必殺! トルニオン・ラストツール・スレッジハンマー!!」
「最後まで聞けよぶがばあぁ!!」


エルミナスの一撃が、レイトルの頭部めがけて叩きつけられる。すると家1軒ほどもある巨大な電気の塊が、まるでハンマーを振るったように、彼の体全体を覆いつくした。




変身を解くエル。彼女が再び立ち上がった時、研究所は見事に崩壊していた。後悔はしていない。モノポリアを壊滅させたのだから。
ふと彼女は、あたりが妙に静かな事に気付いた。レイトルの攻撃がやみ、あの強烈な音波が飛ばなくなったからだ。
「静かね…」
エルはゆっくりとした動きでシデンの元へ向かい、再びその体を抱き寄せる。彼女は2つの鼓動を感じてホッとした。
「シデン…私ね、今あなたと同じ世界にいるのよ…」
サイレンの音が聞こえてくるまでの間、エルは2人だけの世界でまた、静かに泣いていた。

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