「この発狂のリズムに、耐え切れるかぁ?!」
強力な音波が、エルの耳を刺激し続ける。生身の体では危険すぎると判断した彼女は、急いでデバイスのレバーを引いた。彼女の身を守る鎧が、光とともに現われ、彼女を優しく包み込んだ。音への防御を考え、ネイキッドではない今までの姿を選んだあたり、彼女の精神はまだ健全である。
「雷鳴の申し子、エルミナス参…!」
ポーズを決めようとした瞬間、彼女の体がぐらりと揺れた。音が頭に響いて仕方ないのだ。
「無敗のチャンピオンも、音の前では無力同然!」
ルーシェルの拳が、エルミナスにいくつも突き刺さる。それでも彼女は踏ん張り、立ち続けた。そして彼女はこう呟く。
「くっ! …でも、あまり、痛くない」
「…どうせ俺は、旧世代のキメラですよ」
途端にルーシェルがいじけだした。地面に『の』の字を描き出す始末だ。敵対するエルミナスが、思わず同情したくらいだ。
それでも彼女を襲う音は止まらない。だんだん上下の違いが分からなくなっている。
「でも俺は、弱っている奴専門だから、これで良いんだよ!」
ようやく開き直ったルーシェルは、再びエルミナスにダメージを与え始めた。普段の彼女では考えられないほど、攻撃が命中していく。シデンから受けたダメージが今、彼女の肉体を締め付けていた。
『SET READY?』
突如鳴り響いた、悪魔の声。さすがのエルミナスも、この時ばかりは体が震えた。
「そろそろ、決着をつけなくちゃな!」
慣れない手つきで、ルーシェルはレバーを一気に引く。
『LUCIFER SYSTEM GO!』


彼の背後から、おびただしい量のリングがあふれ出てきた。金色に光り輝くそれはまるで、天使のリングのようだ。
「これら1つ1つが全て、超音波発生装置だ」
リングは音も無く飛び回り、エルミナスの周囲を取り巻き始めた。
「全ての音波を一点で干渉させる! 強力な破壊力はお前の体を、内部から破壊するだろうよ!」
「しまっ…!」
ルーシェルの声にあわせるかのように、リングは一斉に輝き始める。慌てて逃げようにも、体が言う事をきかない。疲労のためか、恐怖のためか、それすら判別できなかった。
「砕け散れぇ!!」
リングは音も無く、エルミナスのいる場所目掛けて、いっせいに音波を放った。

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