シデンの突然の訪問から、10分が過ぎようとしていた。彼女の脅威に驚きながらもエルミナスは、彼女がまだ子供である事を自覚する。
「なぁに、もうへばったの?」
「放っておいて…」
何度も放たれる電撃を受けながらも、エルミナスは果敢に攻めていく。強化服である鎧が壊れても、当の本人は一向に構わない。それよりも、大きく動き回りながらのかく乱作戦が、思いのほかうまくいっている事が大切だった。
「やっぱり体力無いのね。息が上がってるじゃない。運動してる?」
そしてたまに彼女を挑発してみる。すると見事に、ウィルオウィスプはさらに電撃を放ち、無理矢理エルミナスを倒そうとしてくる。そのたびに体力を消耗し、息があがる。『経験がものを言う』とは、まさにこの事だ。
「それに私もデンキナマズよ。種族は違うけれど、何となく分かるわ」
ウィルオウィスプの背後まで近寄り、人差し指1本だけで電流を流す。途端、少女の体はビクリと震える。
「ここ痺れるでしょ? 神経に直接流すから、後々響くわよ?」
「うるさい」
指の先から、何本も電気のレーザービームを放つウィルオウィスプ。しかし既に体力を消耗している彼女に、命中させるだけの集中力は残されていない。


気付けば、決戦は
「…もういい」
フラフラになったウィルオウィスプは、諦めたかのように呟いた。
「やめよう、姉さん…こんな事」
「あら…ようやく分かってくれた? そう、私たちはこんな所で命を張り合う必要なんて無いの。不毛な戦いはここで終わりにして…」
『SET READY?』
悪魔の声が部屋中に響き渡る。
「この建物まるごと、不毛の地にするんだから!」
『WILL O'THE WISP SYSTEM GO!』

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