「きれいね」
ウィルオウィスプを見て、エルミナスは呟いた。怪しげな色合いがとても妖美だ。
「姉さんこそ」
彼女に言われて、エルミナスはふと自分の姿を見る。彼女の鎧は、黒と赤を基調にされていた。パーツの合間は黄色に塗られている。少しでも動けば、警戒色が敵を刺激する仕様だ。
「きれいなのに…姉さんごと壊さなきゃいけない」
突っ立っていたウェイルオウィスプが、ゆらりと動き始めた。いよいよ彼女との戦闘が始まるようだ。しかし、エルミナスは動揺を隠せない。
「またあの電気を浴びなきゃいけないのかしら?」
今まで受けてきた攻撃の中でも、シデンの電気は、屈指の威力を誇っている。果たして自分の電気が、彼女に通じるかどうか。
「だんまり?」
動く気配の無い彼女に、ウィルオウィスプが口を開いた。
「私からいくね」


気付いた瞬間、ウィルオウィスプの姿は消えていた。あるのは、紫色の光の筋だけである。その光は彼女のそばを横切り、背後へ続いていた。
「速…!」
「遅いよ」
ウィルオウィスプの体から発せられている光が、残像となったものを、彼女は見ていたのだ。背後からの突然の電流に、思わずエルミナスは大きく跳躍する。
「『CFスキャンシステム』作動!」
電気も強ければ、速さもある。もはや彼女に余裕は無くなった。広範囲探索用のシステムも起動させ、敵からの攻撃に万全の対策をつくす。
「私だって、姉さんと同じ事が出来るんだから」
獲物を逃したウィルオウィスプは、周囲に放電を始めた。
「『Eスキャンシステム』作動」


説明しよう!
電流を流して周囲を確認するのは、デンキナマズだけではない。デンキウナギもまた同様に、周囲に電気を流しながら獲物を探す習性を持っているのだ。
理論はエルミナスと変わらない。しかし、その威力は違う。彼女はデンキナマズよりも電力の強い生き物・デンキウナギの遺伝子を持っているのだから。
ちなみに『E』とは、ウナギの英語である『イール』の頭文字の事だ!


「そこ」
ウィルオウィスプの拳が、床に叩きつけられる。流れた高圧電流が、研究所の床のあちこちを破壊した。それはちょうど、エルミナスの落下地点でもある所でも…。
「きゃあ!」
突然開いた穴に驚き、尻餅をつくエルミナス。その視界一杯まで、ウィルオウィスプが近付いていた。

 戻る