「デンキウナギ…どうりで電力が強いはずね。どうしてここが分かったの?」
まだピリピリ震える腕をかばいながら、エルは尋ねる。
「この近所のゴミ捨て場から、変なゴミが出たって噂を聞いたの。三角形の白い物体で、とても硬いゴミ…姉さんなら見覚えあるでしょ?」
一切表情を変えないまま、その噂のゴミを手にするシデン。エルはうなずいた。
「当たり前よ。それは私が以前倒した、サメのキメラの歯ね」
「軽率なんだから」
軽いスナップで、シデンはそれを投げつける。空中ではあるがエルは、白杖を使ってそれらを撃ち落した。
「以前から調べはついていたらしいね…『モノポリアとエルミナスの本拠地は、かなり近いところにある』って。そうでもなきゃ、あれだけの時間で、キメラの元には辿り着けない。あなたの運動能力から、そういう計算が出たの」
「本当、よく知っているのね。生まれたばかりなのに」
エルの問いに、彼女は少し口をつぐんだ。
「…一生懸命、勉強したから」
「それなら、彼らが何をしているところか…それも分かっているはずよね?」
「それは…」
突如、シデンの頬に痛みが走った。一瞬気を緩めたと同時に、エルが間合いを詰めたのだ。そしてこのビンタである。さすがは連戦連勝の戦士だ。
「今すぐやめなさい! あなたがこれからしようとしている事は! あなたが思っている以上に罪深いのよ?!」
生まれたての少女の無垢な心に、エルの正義としての心が突き動かされた。それで思わず出たのが、このビンタだ。この痛みで気付いてくれれば…これは、エルの賭けでもあった。
しかし、殴られた本人は、しばらく頬を撫でていたかと思うと、ポツリと呟いた。
「殴った…初めて、殴られた…痛い…」
そして再び、キッと睨むシデン。
「モノポリアは! 私にこんな事なんてしなかった!」


エルの体は、少女のストレートを受け、数メートルも吹き飛んでいた。

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