トライデント計画に欠かせない変身機具…それが『トライデントデバイス』だ。さすがに本家のクオリティには追いつかなかったが、性能自体は何ら遜色が無い。キメラの性質にあわせて個別に調整されているため、利用者が限定されているのが欠点だが、今までのキメラではとても出せないエネルギーを引き出す事が出来るのだ。
しかし、これだけのものを開発する人材も、開発費も無いのが今のモノポリアだ。どうして今頃、これほどの代物が現われたのだろうか…レイトルにはそこが不思議だった。
「『トライデント計画』は、元々ボスが言い出した事だ」
思い出すように、マナギは喋り始めた。
「それと同時に、初めて私の元にアルファベッツが送り込まれたんだ。ボスは私に『これを元に強化型のキメラを作成せよ』と言った。もちろん、指定の動物を使って、な」
「つまり全ては、ボスの企みだったって事か。それじゃ、そのデバイスを作ったのは…?」
「それは私の知る範疇では無い」
レイトルの、余計な詮索を一蹴するように、彼は言い放った。
「どちらにしろ、組織の今の状況を知っておきながら、あのボスがたてた計画だ。そろそろ終幕なのは間違い無い。奴が勝とうが、私たちが勝とうが…どうせ私たちが勝つがな!」
「そうだ! 絶対買ってやるんだ!」
「その後、祝杯あげるんだ!」
「二次会にも行くんだ!」
「三次会のカラオケでは90点出してやる!」
「四次会のボーリングでは200点出してやる!」
2人の無邪気なはしゃぎ声は、その後もアパートに響き続けるのだった。


「どちらにしろ、溜まっている有給休暇、明日から全部使い切っておきます」
「そうしておけ」
これほど緊迫した状況でも、有給の処理は忘れない。
悪の組織『モノポリア』の福利厚生は妙に充実していた。

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