「もう猶予は無い!」
株式会社モノポリアの全体集会は、その日の晩行われた。
「2人同時完成に至らず、1人だけ先に送り込んだが…結果は完敗だった! だが、これ以上贅沢を言っている暇は無い!」
配られた分厚い資料には『−』の文字がぎっしり並んでいた。
「残っているキメラは、現在成長中である最後のキメラを入れても2人! 研究開発費も用意されず、これ以上のキメラ作成は不可能だ! これがどういう意味か、分かるか、レイトル?!」
最年長キメラ、レイトル。適性が合わないため、結局最後まで残ってしまったようだ。たった2人の緊急集会。みじめ過ぎる…。
さて、名指しで呼ばれた彼は、叫ぶように答えた。
「組織壊滅は目前、トライデント計画の3人目は作成不可能、下手をすればあと数日で全滅…という事です!」
「そのためにはどうすれば良いと思う?!」
「その作成中のキメラの完成を待って、全員で最後の突撃をする事です!」
「その通り! …と、言いたいところだが」
突然、マナギの声が大人しくなった。
「実は、トライデント3人目を用意出来ない訳では無いのだ」
「マジで?! いや、さすがは博士! やっぱり天才の名は伊達じゃ無いねぇ! ねぇ、どうするんですか? どんな天才的手法ですか?!」
マナギはいくつか咳払いをすると、レイトルに熱い視線を送った。
「お前がなるんだよ」
「はい?!」
「本当は、強化デザインされたイルカのキメラを採用するつもりだったのだが、変更だ。お前がなれ」
「しかし、俺にそのデバイスを使いこなせるかどうかは…」
「心配ない」
マナギの口調は、自信満々だ。
「お前との相性が合致した。お前なら扱える。…いや、お前でなければ、きっと使いこなせないだろう」
「マジっすか…!」
「初めての適性合格だからな…初陣に花を飾るんだ、良いな?!」
「はい!」
無意識に敬礼するレイトル。その様子はまるで兵隊と上官のようだった。


「質問があるんですけど」
集会が終わり、部屋の片づけをしている最中、レイトルが口を開いた。
「さっきの間にしろ、全く…何だ?」
「これだけ経済危機で、しかも博士は生物専門なのに…誰があのデバイスを作ったんですか?」

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