街は今、黒い煙に覆われている。焦げ付いたセイタカアワダチソウが、一部発火しているからだ。しかしそれも、じきに治まるだろう。
「『シス-デヒドロマトリカリエステル』」
ふとワクラバが呟いた。ユグドラシルはもういない。高圧電流を直撃し、鎧もろとも破壊されてしまったのだ。
「知ってるかい?」
「い…いいえ」
どう処分するべきか…その事でちょうど悩んでいたエルミナスは、彼の突然の問いかけに、少し慌てふためいた。
「僕たちセイタカアワダチソウが、根から出す化学物質の名前さ」
「さっき言っていた成長抑制物質の事?」
エルミナスの電撃は、彼の繊細な細胞をも破壊していた。彼が立ち上がる事は、2度と無いだろう。
「実はね、僕たちセイタカアワダチソウ自身も、成長を止めてしまうのさ。やがて僕たちはいなくなり…あとにはススキが残るのみ」
彼は強い口調で、さらに言葉を付け加えた。
「捨て駒なのは知っていたよ。いや、贅沢な捨て駒にならざるを得なかった…てところかな」
「それだけモノポリアも、経済危機って事ね」
「それはもう、酷いものだったよ。皆飢えをしのぐため、栄養補助食品を粉末にしたものを水と一緒に飲んで、横になって暮らしていた」
それはもはや貧乏生活と言えよう。
「この僕をここまでコケにしてくれたからね。応援しているよ。セイタカアワダチソウの神に祈っておこう」
「いらない」
「このセイタカアワダチソウ畑はきっとススキ畑となり、君の頬を撫でるだろう」
「いらない」
「…」
「あれ? もしもし?」


ワクラバは天に召された。臨終間近だったのか、元々寿命が短いのか、エルミナスの言葉にショックを受けたのか…その死因は分からない。
ただ確実に分かっているのは、ワクラバの顔はとても満足げな笑顔だった事と、次に発したエルミナスの言葉が…。
「セイタカアワダチソウ…文字数多過ぎ(汗)」

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