「初めて見た時はおっかなびっくりしたけれど…案外悪くないものね!」
襲いかかってくる植物の群れをかわしながら、エルミナスは高らかに叫んだ。
「不肖エルミナス、不本意ながらも本領発揮って感じがするわ!」
「ヒーローにはやっぱり、これくらいの派手さが必要だからね」
巨大な樹木の幹くらいにまで集まったツルが、一斉にエルミナスへ突進していく。それを彼女はパンチとキックで、ことごとくかわしていった。
「しかし、さすがは正義の味方。これだけの攻撃を、一撃も受けないなんてね」
「自業自得よ」
飛び交う種の弾丸をかわし続けるエルミナス。その表情には、不敵な笑みが浮かんでいる。
「あなたは自分の事を喋り過ぎた。植物を愛している人が、そうやすやすと植物を薙ぎ倒す筈がないのよ」
再びやって来たツルのパンチを見て、彼女はひらりと並木の陰に身を隠した。まっすぐにやって来ていたツルは、途中で2つに分裂し、左右から彼女に襲い掛かってくる。
「そこ!」
すかさず電撃をいれ、黒コゲにするエルミナス。黒い煙をあげながら、ツタはボタリと転げ落ちた。
「植物の王が、平気で環境を破壊しまくるのも、どうかと思ってね。でも大丈夫」
生き延びたもう一方のツタが、地面に突き刺さる。すると突然、エルミナスの頭上から、たくさんの枯葉が降り注いだ。なんとそばの木が、みるみるうちに枯れていったのだ。
「つくづく君は、僕たちを甘く見ているらしい。セイタカアワダチソウは、根から成長抑制物質を流し込み、自分たちの領域を広げていく植物なんだよ。こういう現象を『アレロパシー』っていうんだけどね」
「…環境破壊じゃないの?」
「違うよ。これは自然淘汰だからさ」
気付けばそばの木はもう、ボロボロに枯れ果てている。すると、死ねばただの木材と言わんばかりに、ツタは再び塊となって、エルミナスへまっすぐ突進してきた。
「っ!」
慌てて地を蹴り、横へ攻撃をかわす。ツタの塊を受けて枯れ木は、バキバキと音を立てて割れていった。
「もう音を上げたりしないよね?」
「当たり前じゃない」
地面のあるところなら、どこからでも攻撃を仕掛けられる…それがユグドラシルの真の恐怖である。彼女は敵になめられまいと、強がりを言ってみせた。
「あと10分でケリをつけてあげるわ」

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