「ほら、立派に育つんだよ」
花壇には謎の花が、所狭しと生えていた。それを育てる少年の顔には、満面の笑みがこぼれていた。
「こんなに美しい花だというのに、どうして誰も理解してくれないんだろうね」


「どこが美しい花よ!」
一蹴するように、花壇の真上に着地するエルミナス。その衝撃で花は、根元から吹き飛んだ。
「植物を粗末にしちゃダメじゃないか。もしかして非自然派?」
「非キメラ派よ」
エルミナスはマスクの奥で、彼を睨みつけた。
「それにしても、あなた…いつもと雰囲気の違うキメラね」
「分かる? 僕ほどの貴族になると、オーラがにじみ出るんだろうなぁ」
そう言いながら彼はジョウロで、花壇に水をまいていく。どうやら育てているらしい。
「こんな気味の悪い花だらけにしちゃって! 他の植物が可哀想だとは思わないの?」
「思わないなぁ」
彼はあっさりと答えた。
「僕たちはそういう植物だから。僕たちのペースについていけず、他の花はみんな散っちゃうんだ。これは仕方の無い事。弱肉強食っていうのかな、自然淘汰っていうのかな」
彼はジョウロを投げ捨てると、キリリと睨んできた。それまでとはうってかわって、マジメな空気が流れてくる。
「僕の名前はワクラバ。トライデント・ベイビーの第1号キメラ、TB-1型」
そう言って彼は右腕に巻きつけられた、腕時計のようなものを見せ付けた。
「それは…フェノメナ・デバイス?!」
「専売特許、もらったよ!」
それは、エルミナスであるエル自身が持っているものとよく似ていた。違う点といえば、レバーが3本もついている事だ。彼はそのうち、左のレバーをガシャリと引いた。
『SET READY?』
それに対してワクラバは、今度は一番右のレバーを動かす。
『TRIDENT SYSTEM GO!』


説明しよう!
『トライデントシステム』とは、対エルミナス用に開発されたシステムの事だ。変身の仕方は、エルミナスとさほど変わらないから省略。
ちなみに『TRIDENT』とは、『三大機動独自性特派装甲隊員(Triad Rapid Individual Draft ENergy Troopers)』の略らしいが、完全に流し読みで結構だ!


緑色のツルが絡んだような、まがまがしい鎧の男が、そこにいた。
「植物に愛されし王、ユグドラシル参上!」

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