「この犬歯のおかげで、俺はここまで生きてこれた」
エルミナスの肩を噛みながら、ジェイは唸るように呟いた。
「噛み砕いてやる!」
「くっ!」
エルミナスは必死になって、ジェイの腹部をひざで蹴る。しかし、それでも彼は噛み付いたまま、離れようとしない。ミシミシと音を立てるボディ。破損するのも時間の問題だ。
「『トルニオン・レイン』!」
右手を広げ、電気の粒を発射しようとしたその時、ジェイの手がその腕を掴んだ。至近距離で戦う事自体、彼の不利でもある。少しでも勝算を上げるためには、いかに彼女の攻撃を避けるかがポイントなのだ。
必死に腕を、あさっての方向へ向けるジェイ。放たれた電気の粒は、採石場の雨となって散るばかりである。
「あなた、感電死したいの?!」
「構わないね! これが俺の、最良手段だ!」
彼女が手間取っていると、ジェイは隙を見て口を離す。それと同時に、彼女の腹部を蹴りつけた。突然の行動に、エルミナスは思わず転んだ。その上から覆いかぶさるように、ジェイが飛び込んできた。大きく開いた口から、鋭い犬歯を光らせ、彼女ののど元に噛み付いた。
「こ、この…!」
あろう事か彼はこの、のどへの攻撃を切り札にしていたのだ。このまま食いちぎられたら、さすがのエルミナスも一巻の終わりである。それだけは避けるべく、彼女は周囲に強力な電気を流し初めた。
「お前の電気が先か…俺の歯が先か…賭けるのも悪くないな」
感電しながら、ジェイはそう呟いた。
「私は電気に1票」
「俺は歯に1票」
「お互いの命を賭けて、ね!」
ジェイに噛みつかれながら、エルミナスは再びパンチを繰り出し始める。しかし、彼の腹筋がそれを拒む。喉に噛み付いたジェイは頭を中心に殴っているが、少しやりにくそうだ。

 戻る