「勇ましいこと。私はデンキナマズよ」
「電気で周りを見ているのか…だからこの間、見つかったのか」
感心するように何度もうなづくジェイ。
「それで、どうする? お互い素性を明かしちゃって」
「決まっているわ」
エルは、彼の首を鷲掴みにする。
「ここで始末する!」


説明しよう!
体内で作った電流を筋肉へ送る事により、エルは一時的にパワーを底上げする事が出来るのだ。
とはいえ、その分疲労が溜まるなど副作用もあるため、滅多に使われる事の無い奥の手だ。


「ぐ…!」
「全電力を持って、あなたを焦がす!」
直後ジェイの体に、強力な電気が流れ始めた。これから身を守るためには、彼女の腕から離れなければならない。しかし彼の手は、エルの腕を握り締めたまま、ピクリとも動こうとしない。
「2アンペアよ。それ以上の電流を受ければ、筋肉は収縮するの! あなたはもう、手を離せないわ!」
電流が流れ続ける以上、彼の手は役に立たない。気が遠くなりそうな中、ジェイは最後の力を振り絞り、のどに力をこめた。
「〜!!」
ジェイの遠吠えが、街中にこだました。すると突然、周辺の犬が吠え始めた。まるで彼の声を聞きつけたように。
「助けを求める遠吠え…危険を知らせる遠吠え…!」
ハッと我に返ったエルは、すぐさま電流を止めた。体をピクピクさせながら、ジェイはニヤリと笑った。もはや町中は、犬の鳴き声で一杯だ。
「これだけ吠えりゃ、飼い主が外に出てくるよな…人様に顔を見られてでも、電気を流せるのか?」
「くっ!」
匿名を守っていたエルの弱点をついた、ジェイの機転が功を指した。彼はすぐさま手を振り払い、間合いを取る。
電流のダメージは想像以上だ。これ以上戦えば、彼の動きが止まるのは目に見えていた。とは言え、エルも辛そうである。夢中で電気を起こしたためか、疲労し切っていた。


「なぁ…今日は休戦にしないか?」
ジェイの提案は、意外だった。
「お互い疲れ切っている。俺は良いけど…君が倒れたら、誰がキメラ達の相手をするんだ?」
この戦況…どちらかと言えば、ジェイの方が不利だった。このまま戦闘再開すれば、きっと彼が負けるだろう。だからこそ、彼はハッタリをかます必要があった。

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