ここ数日、ニコ魔術研究所では、キメラ出現のサイレンが鳴りっぱなしである。
「エルー! キメラが出たわ。準備お願いー!」
「またですか? 最近多いですね」
「どうせ資金繰りが悪くなったから、捨て身戦略に出たのよ。さすがヤーパン。この平成の世の中に、あの『カミカゼ』が見れるとは思わなかったわ」
「その確認も兼ねて、行って来ますね」


「ぐわぁ!」
エルミナスの破壊力は、一向に衰えを見せない。どれだけ連戦になっても、彼女は安定した動きを見せ、確実に敵キメラ達を破壊していく。
「ただでは、死なん…今こそ、俺の最後の必殺技『ザクザクストライク』を見せてや…げふぅ!」
彼が言い終わらないうちに、エルミナスの鋭い蹴りが、彼の頭にヒットする。
「敵なら敵らしく、正々堂々と卑怯な事をすれば良いのですよ、カマキリ男さん?」
「誰がカマキリ男だ! 俺には『マンテス』という、立派な名…おぶぅ!」
強化された蹴りが、無防備なマンテスの腹にねじ込まれる。
「街を荒らし、皆を恐怖におとしいれるような人の名前なんて、覚える気はありません」
「ちくしょ…何度も腹を蹴るなよ…まるでお前が悪人じゃないか」
「そんな鎌を持っている時点で、あなたが悪人です」
彼の手は、カマキリの遺伝子のおかげで、体の半分ほどもある巨大な鎌になっている。しかし今はもう、それを振る体力は残されていなかった。
「ククク…やれよ、一思いに。ばっさりとよ…」
「するわよ。あなたたちが現われるたび、何度でも」
彼女の両手が、空に向けられる。すると掌から、まるで植物のように、光の柱が生え出した。彼女の必殺技が、マンテスに向けられているのだ。


その時、彼が笑った。力なく、不気味な声を上げて。
「け、計画は…順調に進んでいる…お前、余裕でいられるのも、そろそろ終わりだ、ぜ…『トライ…デント計…画』は、神をも殺…」
「『トルニオン・キャリバーン』!!」


電撃の剣が、マンテスの体を真っ二つにする。その瞬間、高圧電流を受け、バチバチと黒コゲになっていく。一斉に火がついたかと思えば、彼の体は爆発、そのまま消えてしまった。
「…汚れた魂に、清浄なる救いを」
そう呟くと、決めポーズを取るエルミナス。しかし、彼女の頭は既に、別の事を考えていた。
「『トライデント計画』…初耳ね。一体モノポリアで、何が起こっているの…?」

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