アルが謎の少女の胃袋に泣いている時、モノポリア御一行はとある海辺を訪れていた。少しシーズンオフだが、その年が少し暑かった事と、寒くても海に入れる我慢強いキメラ達ばかりという事もあり、敢えてこの地を選んだようだ。
「お前達は本当に、よく海に入っていられるよな」
だからマナギがポツリと呟くのも、当たり前の事である。
「全く。これだから恒温動物ってやつは…」
「何だ、レイトルは入らないのか?」
「いやぁ…俺はホラ、変温動物の血が混じってるから」
そう言ってマナギ博士の隣に座るレイトル。随分前に誕生したが、彼に見合う戦局が無かったため、キメラ達の中ではかなり先輩だ。
「で…どうなんです、うちの組織の状況は?」
「ハッキリ言って、相当手詰まりだ。今度の作戦が失敗すれば、多分解散だ」
「相変わらず、崖っぷち経営な事」
そんな経営状態でも、社員旅行は欠かさない悪の組織・モノポリア。部下の士気を上げるのが目的なのだが、効果の程は定かでない。
「安心しろ。最後のアルファベッツ2人を発見、勧誘に成功している。…1人は行方不明だが」
「大丈夫です! 博士の指示通り、俺達全員、カツオ節を常備してますから。ホラ!」
そう言って彼はポケットから、大きなカツオ節(削る前)を見せた。それにしても、立派なカツオ節だ。そりゃもう、京都の料亭で使われていても、何ら不思議は無いくらいの。
「後は博士の腕次第ですね。最新のキメラ、期待してますからね」
「何が期待だ」
フンと鼻で笑うマナギ。
「私の人生に、スランプという言葉は無い。毎日が上昇志向だ。この間作ったキメラ達の弱点くらい、すぐに補えるのだ」
「さっすが博士! 頼りになるぅ!」
2人は思い切り立ち上がった。
「レイトル! すぐにビーチボールを用意しろ! 結束を高める恒例行事! 全員ビーチバレーだ!」
「ラジャー!」


梅雨の時期に、浜辺でビーチバレーに熱中する男12人の姿は、もはやシュールと呼ぶに相応しかった。

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