楽しい時ほど、早く過ぎる時間は無いと思う。おみやげを手にしたニコ達はもう、研究所のそばまで帰ってきていた。
「私達がいない間、どんな風に過ごしていたんだろう?」
「案外、のんべんだらりと暮らしていたりして」
そんな事を言いながら2人は、研究所の扉を開けた。
「ただいまー!」
「アルさん、おみやげありますよー!」
「お、おみやげ?!」
その言葉に反応した影の主が、どたどたとやって来た。


「…え?」
「…誰?」
その人物こそ、この研究所に突然現われた、あの少女だった。思いも寄らぬ展開にキョトンとする2人。
「はじめまして、にゃは♪」
「あ、どうも」
「はじめまして」
思わず軽い会釈をする2人。彼女達に出来たのは、遠慮無しにおみやげを取ろうとする彼女を制する事だけだった。


「ちょっと、アル?! 誰よ、あの女?!」
謎の少女を振り切り、リビングへ到着したニコ博士。そこには、横たわるアルの姿があった。
「あ、アル?!」
慌てて駆け寄るニコ。何度か体を揺すると、彼は目を覚ました。
「あ…おかえりなさい、博士…」
「どうしたの、アル?! あの女に何をされたの?!」
「お…おみやげは?」
「この状況でどうしておみやげを?!」
その時彼女は、エルに呼びかけられた。
「どうやら、私達のおみやげが防衛ラインだったようです」
そう言ってエルが指差す先…それは、空になった冷蔵庫だった。首根っこをつかまれながら、謎の少女は喋る。
「いや、その…最近食事にありつけなかったから、ここの食べ物、手当たり次第に食べちゃって…いわゆる食糧難です…はい、そうです、すみません…」


「飽食大国に食糧難なんて、呆れて怒る気にもなれないわ!」
おみやげのまんじゅうを頬張りながら、プンスカ怒るニコ。アルはシクシク泣いていた。
「あぁ、おまんじゅう…久し振りの食べ物…うっうっ…」
「うまうま…」
これだけ迷惑をかけておきながら、それでもご馳走になる少女を、ニコはぎらりと睨みつけた。
「大体あなた…何者なの?」
「あ、そっか。自己紹介しなきゃ」
頬張ったまんじゅうを呑み込むと、彼女は自慢げに言った。
「私の名前はケイ! あなたと同じ、アルファベッツよ」
「何ですって?!」
驚くエルに、彼女は笑った。
「にゃは♪」

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