株式会社モノポリアでは、朝から動きが見られた。所属しているキメラ達が皆、大きなカバンを持って、出掛ける用意を整えていた。
「忘れ物は無いな? ちゃんとお金は管理しろよ。お小遣いは1万円までだからな」
的確な指示を出すマナギ博士もまた、旅行カバンを手にしていた。皆、とても楽しそうな顔をしている。そう、今日は待ちに待った、彼らの社員旅行の日なのだ。


皆が用意を整え、そろそろ出発しようかと思っていた矢先の事だ。
「レイトル、先に点呼をしておいてくれ」
「え、どうして俺が?」
「ボスから連絡が来た。ちょっと聞きに行ってくる」
そう言い残し、慌てて中へと戻るマナギ。彼がスイッチを入れると画面に、ボスの姿が現れた。
「マナギ…少し厄介な事になった」
「どうしましたか? 落ち着き無いですね」
「実は今度、そっちへ送ろうと思っていたアルファベッツの1人が、行方不明になってしまった」
久しぶりの不祥事に、マナギは驚いた。たとえ悪の組織の首領といえど、結局は人の子、という事か。
「珍しいですね、ボスがミスを犯すなんて」
「全くだ。責任を取って、3割減給しようと思う」
「そんな事よりも、そのアルファベッツの行方の方が大事です。いなくなった理由とか、行きそうな所とか、何か無いんですか?」
ボスは少し気まずそうに口を開いた。
「本名はケイ。形式番号K-3961。ネコの遺伝子が組み込まれている。お前も覚えがあると思う」
「あぁ! あいつか! まだ組織が壊滅する前、ちょっと目を離した隙に、研究者全員のおやつを平らげた奴だ!」
「あの時はお前達のモチベーションが下がり、組織に解散まで追い込まれたものだ…」
今となっては笑い話のような思い出話に、懐かしさを覚える2人。
「つい先日発見され、その時は全面協力を約束してくれたのだが…あのネコ特有の気紛れが、また出てしまったらしい」
「しかし、ボスもボスです。あいつだと知っていながら、どうして厳重に保管しないんですか?」
「だって…本当に大人しかったし、積極的に参加してくれたし…今思えばあれは、ネコを被っていたのかもしれんが…」
いじけるボスに、マナギはそれ以上追求出来なかった。
「…分かりました。キメラ達全員に伝えておきます。『逃走したアルファベッツを探せ、カツオ節さえあれば探せる』と」

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