「く!」
先手を取ったのは、アイの高速飛行だった。低空飛行からの急上昇、上空からコンクリート片を投げつつ、不意をついて体当たりを仕掛けてくる。警戒心を露にした彼女に、エルミナスの拳は空振りが続いた。
「逃がさないわよ!」
放電して攻撃しようにも、その瞬間彼女は地表まで戻り、金属粉を撒き散らすのだ。対エルミナス戦法は彼女にも教えられていた。みるみる息を荒くするエルミナス。体力消耗のため、電気が弱くなり始めている。自慢の鎧にも傷がつき始めていた。


ものの10分もすれば、流れは完全にアイが掴んでいた。
「私だって、お姉ちゃんとは戦いたくないんだよ? お姉ちゃんは、私の大切な人だから」
空中に漂いながら、アイが口を開いた。
「でも、私にはそれ以上に、お金の方が大事なの…ただそれだけだから。悪いのは私だから…」
そう呟く彼女の目から、また涙が流れ出た。


「腕を上げたわね、アイ」
その時、エルミナスが口を開いた。
「泣き虫で、いっつも私の背中に隠れていたあの頃より、ずっとたくましくなったわ。…苦労したのね」
「…」
「でも、泣き虫なのは変わらないみたいね?」
彼女は呼吸を整えると、再びフェノメナデバイスに電流を送った。
『SET READY?』
あの電子音が、コンクリートジャングルに響き渡る。
「ここまでコケにされたんじゃ、仕方ないわ。その甘ったれた心…私がしつけてあげるから!」
レバーを引く力が、エルミナスの覚悟を物語っていた。
『NAKED SYSTEM GO!』


説明しよう!
ネイキッドシステムとは、エルミナスの強化服を覆っている装甲を破壊し、エルミナス・ネイキッドへ変身するシステムの事だ。防御力を完全に無視する反面、その分重量を大きく減少させ、攻撃力と速度を強化させるという、まさに諸刃の剣である!


鎧に隠れていたエルのロングヘアーが、ぱさりと広がった。全身スーツのような表面には、いくつか電子部品が剥き出しになっていた。
「亜光速を凌駕する…エルミナス・ネイキッド参上!!」

 戻る