滞空しながらアイは、小さなカプセルに、エルの鮮血を流し込んでいた。右手で握り締められたナイフからポタポタと、赤い液体が滴り落ちている。
「これ…お願いします」
少し離れたところまで戻り、待機していたチータに投げつけた。
「ひとっ走り行ってくる!」
キャッチするや否や、彼は全速力で街を駆け出した。その速さは実に時速100キロを超えている。現在最強の遺伝子情報が詰まったこのカプセルは、まさに組織の命運を握っていると言えよう。まさに彼は、友のために走るメロスのような存在だ。


それがどれだけ危険な事か…それはエルも知っている。いくら遠くに離れていても、電流の亜光速には敵わない。彼が走り出した事は、彼女にも伝わっていた。
「渡さない…それだけは、絶対に!」
電流の出力を上げ、特殊腕時計『フェノメナデバイス』に流し込むエル。すると時計は特殊モードに入った。
『SET READY?』
カシャリと飛び出したレバーを引き、彼女はその機能を発動させた。
『PHENOMENA SYSTEM GO!』


説明しよう!
『フェノメナシステム』とは、彼女が起こした電流によって起動する、エルミナスへの変身システムの事だ。強化服のデータを電送、彼女の周囲で凝縮させ、身に纏う事で彼女は変身出来るのだ。
ちなみに『PHENOMENA』とは、『分離式高性能非生体的金属神経武装(Partial High Efficiency Non Organic MEtal Nerve Arm)』の略だと博士は言っているが、ここらへんは流し読みで結構だ!


「この世にはびこる悪の末端まで、神の雷で打ち砕く! 雷鳴の申し子、エルミナス参上!!」
ポーズを決めた瞬間、彼女は駆け出した。これ以上敵が勢力を巻き返さないため、世界の平和を守るために。


ところでチーターは、10秒ほどで体力が無くなるのだが、その遺伝子を引き継ぐチータは果たして、どこまで頑張れるのだろうか。

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