「くくく…素晴らしい!」
出てきたデータを見て、マナギは笑顔を隠せずにいた。
「流石は先輩達の知恵の総結集! 私が作ってきたキメラとは、性能がまるで雲泥の差だ!」
彼の傍のカプセルには、発見されたアルファベッツの1人・アイが閉じ込められていた。彼女は静かに、口を開いた。
「…お役に、立てましたか?」
「あぁ、最高だ! このデータを利用すれば、私のキメラの性能は跳ね上がる! 約束通り、報酬額の値上げを交渉してやろう!」
「…良かった」
浮かんだその微笑は、ひどく疲れきっていた。
「しかし、念には念を入れなければならない。今のエルミナスの力は、お前達よりも上なのだからな」
アルファベッツ計画…それは、遺伝子操作で強化した人間に、さらに強化服で能力を底上げし、最強の傭兵を作り上げるものだ。その鎧・エルミナスを着用して戦うエルはつまり、生物の頂点に立っているも同然である。
「幸い奴には、身体の欠陥がある。鎧とはいえ、あくまでもその欠点を補正する道具に過ぎない。ならば私は、奴以上のキメラを作り上げる!」
マナギは壁のボタンを押し、彼女を閉じ込めるカプセルを開いた。脱出のチャンスのように思えるが、自ら志願した彼女にその意思は無い。
「お前にやって貰いたい仕事がある…引き受けてくれるよな?」
「…はい」
その答えは、肯定とも否定ともとれなかった。

 戻る