ここはニコ魔術研究所。
「は!」
ソファに寝転がっていたアルは、突然目を覚ました。
「…何だ、夢か。そうだよね。博士が巨大ライフルで野球ボールを放ってきて、ボールのお尻を狙うなんて…」
「グーテンモルゲン」
そこへちょうど現われるニコ博士。
「昼寝はおしまい。助手なんだから、早く手伝って。早速実験をしたいの」
「また発明ですか? 今度は何を作っ…」
彼女が重そうに抱えるのは、巨大な散弾銃だった。腰にぶら提げた弾には、いくつもの野球ボールが詰まっていた。
「さっきの発明品の強化版よ。アル、早速バットを持ってきなさい」
自分の体以上の銃を運ぶ少女を見て、彼は大きなため息をついた。
「夢じゃなかった…現実だった…」




対してこちらはモノポリア。
「2人のキメラの葬儀は終わったか?」
モニターの向こうにいるボスは、そう話を切り出した。
「はい。しかしボス、今日は機嫌が良いですね?」
「実はお前に朗報がある。アルファベッツが1人見つかった」
アルファベッツ…それは以前、組織が作り出したキメラである。世界最高水準の科学力の結晶で、現在マナギが作っているキメラよりも性能が高い。
「本名はアイ。形式番号I-8901。ハヤブサの遺伝子を組み込んだキメラだ。お前が追い求めていたキメラとみて良いだろう」
「えぇ、それはとても。彼女の真似をして作ったキメラ・クロウドも、今日殉職しました」
それは、先程エルミナスの背後を飛んでいた、あのキメラの事だった。
「成功報酬20万円と言っただけで、快く受け入れてくれたよ。どうやら生活資金に困っていたらしい」
「あの体では、世間に受け入れてもらえませんからね」
「明日付けで彼女を、君の元へ送り届ける。エルミナス討伐のため、研究のため、自由に使え」
「ありがとうござます」
2人の不気味な笑い声が、部屋中に響き渡った。


「ところでボス、私達の社員旅行の件ですが…」
「1週間後だったな。安心しろ、覚えている」
「ありがとうございます」
悪の組織『モノポリア』の福利厚生は案外充実していた。

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