「ま、結論以外は頭の片隅にでも置いておけば良い。まずは、少しだけ昔の事を話そう」
そう免罪符を打ってから、マナギは言葉を続けた。
「元々モノポリアは、科学力を結集した超エリート組織だ。そこには1人のボスと、9人の様々な分野の科学者が集まっていた。遺伝子・生物・化学・物理・機械工学…。その中で私は、遺伝子分野の補佐として、怪人作りの手伝いをしていた」
「ほぉ」
「我々の分野の発展は著しく高かった。そこで生まれたのが、遺伝子を操作し、カプセルで培養した生体兵器で世界を手にする作戦だ。要はお前達、キメラの事だ」
「へぇ」
「ここに化学による増強剤を与え、強化服に身を包む事で、世界最強の戦闘員が完成する筈だった。しかし!」
マナギは傍にあるホワイトボードを、どすんと叩いた。
「その直前で組織は強襲にあい、70%を失ってしまった。残った科学者は私…ただ1人だ」
「ふぅん」
「今後、そのやる気の無さそうな相打ちを禁止する」
怪人達は不満そうな顔をした。彼らは真面目に返事をしていたのに。
「当時作られていたのは、アルファベットを形式番号に持つ26体のキメラ達…アルファベッツだ。しかし今や、彼らの大半は既にいない。生体活動を維持するための薬が切れたためだ」
残念と言いたげな顔をする怪人達。
「投薬の必要が無い、完全な個体もいた。だが、その大半は行方不明だ。今ボスが捜索隊を結成し、その行方を追っている最中だ」
しかし、一度は組織から離れた人間だ。1人でも集まれば儲け物、といったところだろう。所属する組織の昔を知り彼らは、自分達がしなければならない事について、少し考えるようになった。同時に、ある疑惑が浮かんできた。
「…あれ? もしかして、エルミナスというのは…」
こくりと頷いてから、マナギは口を開いた。


「本名はエル。形式番号はL-0017。デンキナマズの遺伝子から作られた、組織出身のキメラだ」

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