正義の味方・エルミナスとして活動する以外では、エルは文学少女だった。ただし、盲目の彼女は普通の本が読めない。点字のついた本を、図書館から借りたり、博士に作ってもらったりして読んでいる。
「コーヒーでも飲もうかな」
だけど、彼女はコーヒーカップへ視線を移した。彼女にはそれが見えているのだ。しかもそれを手にする直前、彼女はこう呟いた。
「今日は砂糖が多めね」
彼女は簡単ながら、その中身さえも分かるのだ。
「アルってばすっかり、コーヒー係になっちゃったわね。本当は優秀な助手なのに」
しかし、窓から入ってきた1匹の蝶に、彼女は少しも気付かない。


簡単に説明しよう!
彼女は目で世界を見ていない。電流で見ているのだ。周囲に微弱な電流を流し、その流れやすさを感知しているのだ。その流れ方や抵抗を感じ取り、そばにある物や人の位置や形を把握しているのだ。だから彼女は、表面の文字や色は分からない。
電流は彼女の体から、地面に向けて流されている。今は足の裏からだが、普段は手にする白杖から流している。だから彼女は、空中にある物は何も感じ取れないのだ。
「あ…ちょうちょ」
彼女が気付いたのは、蝶がカップの取っ手で羽を休ませた時だった。


それでは、何故彼女は、そんな事が出来るのだろうか? それは…おっと。敵対組織モノポリアの方で、何か動きがあったようだ。

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