もうもうと漂う黒煙を目印にするように、街の人々は集まり始めていた。彼らが口にするのは感謝の言葉ばかりだ。そんなギャラリーを押し分けるように、あの女の子は駆け寄ってきた。
「おねーさん!」
少女は満面の笑みを浮かべながら、ヒロインに抱きついてきた。
「あら、さっきの子ね。ケガは無い?」
「うん! お姉さんのおかげだよ!」
彼女は女の子を優しく地に下ろし、優しく頭を撫でていた。その髪は柔らかく綺麗だが、彼女もまた美しい髪をしていた。
「ねえ、お姉さん……私も頑張ったら、お姉さんみたいに強くなれるかな?」
「えぇ。あなたならきっとなれるわ」
女の子の視線に合わせるよう、彼女は腰を下ろした。さっきまで鬼神のような強さを見せていた彼女の鎧も、今ではすっかり天使となっていた。
「だから私はその間、まだ弱いあなたを守るために戦うからね?」
「うん、ありがとう!」
「さて……と。正義の味方は颯爽と帰るわ。じゃあね!」
最後に女の子と握手をすると、彼女は人ごみの中へ消えていったのだった。

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