ケイがニコ魔術研究所のお世話になる事が決まった頃…。
「すまない、マナギ。ケイの行方は、こちらも全力で捜索している。しかし、皆目検討がつかないのだ…」
画面の中のボスが、残念そうにそう語った。
「それならそれで、仕方ないじゃないですか。一旦忘れましょう。それよりも、もう1人のアルファベッツの事が気になります」
部下の前向きな言葉に、ボスはいくらか元気付けられた。
「本名はジェイ。形式番号J-0006。彼にはオオカミの遺伝子が組み込まれている」
それを聞いたマナギは、ホッと息をついた。
「イヌ科ですか。それなら今回のように、裏切らなさそうですね」
「ネコ科とは違うからな。こちらも安心している」
「肝心の身体能力に関しては?」
「そちらも問題無い。以前のアイとは違い、肉体を駆使するパワータイプだ。血の一滴すら利用する機転も持ち合わせている。戦闘能力に関しては、今までで1番と思って差し支えない」
「それは頼りがいがあるというものです。例の計画実行まで、あと少し時間が必要ですから」
ここのところ連敗続きの彼にとって、その情報はとてもありがたいものである。少しでも優勢に立とうとするのは、当然の思考だ。
「お前の遺伝子工学と、私が秘密裏に進めている技術…これが合わされば、たとえエルミナスといえども、我々の野望の前にひれ伏すだろう…」
「えぇ…モノポリアが、全精力を注ぎ込んで挑む最後の計画…『トライデント計画』!」
「エルミナスさえいなければ、楽に世界を奪えたものを…まぁいい。おかげで我々は、最強の戦力を開発するに至ったのだから」
「ボス…奴に思い知らせてやりましょう…我々の偉大さを! モノポリアの尊大さを!」
「そのためのお前達だ。その働き、とくと見させてもらうぞ」


「なお、奴を倒したあかつきには、全員に有給5日分サービスしよう」
「ありがとうございます」
悪の組織『モノポリア』の福利厚生は案外充実していた。

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