今日もニコ魔術研究所は朝から、キメラ対策のために動き回って…いなかった。ニコ博士は趣味で、何やら怪しげなロボットを作っていた。アル助手は役割で、昼食の準備をしていた。エルはニコの隣で、静かに本を読んでいた。ケイに至っては、寝ていた。
「いつか聞こうと思ってたんだけど…」
ふとエルが口を開いた。ご丁寧に、オーディオから流れるテクノ音楽のボリュームを落として。
「どうして『エルミナス』という名前なんですか?」
「あれ、話してなかったっけ?」
「まだです」
しまった、と言いたげな顔をするニコ。すっかり忘れていたらしい。
「あれはね、3つの単語を絡ませた造語なの。1つ目は『輝く』を意味する英語『ルミナス』から。2つ目は静電気による発光現象『セントエルモの火』から。そして最後はエル、あなたの名前からよ」
「私専用という事ね、恐縮します」
「気にしなくて良いわよ。元々作る予定だったし、それに…エルに着てもらえるのなら、私は満足だから」
「私も気にいっているわ、この名前」
「そういうデマゴギーはやめて。お世辞みたいに聞こえるじゃない」
そう言いながら、リモコンでボリュームを上げるニコ。
「それに、あなた専用なんだから、もっと自信を持ちなさい。自分を信じられないで、誰があなたを信じてくれるの?」
「私が…私を信じる…」
すかさずボリュームを下げるエル。
「これでも私、日本語の勉強も頑張ってるんだから。知ってる? 『自分を信じる』と書いて『自信』ていうんだって」
ボリュームを上げるニコ。
「それはとても素晴らしいわね」
ボリュームを下げるエル。
「自分を信じなきゃヒーローは名乗れないのよ。修行あるのみね、エル」
上げるニコ。
「気長に待ってくださいね」
下げるエル。
「ちょっとくらい良いじゃない」
上げるニコ。
「人と喋る時は、音量を下げなさい」
下げるエル。
「大丈夫だって」
「大丈夫じゃない」
その時リビングの明かりが、ブツリと切れた。小気味良い音楽を流していたラジカセも、すっかり黙ってしまった。突然の停電に、思わず固まる2人。すると台所から、アルの声が聞こえてきた。
「ゴメンなさい。電子レンジとオーブンを一緒につけたら、電力が大きくなっちゃって…」
ボリュームを上げるニコ。
ボリュームを下げるエル。
ブレーカーを落とすアル。
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