雨降りしきる寒い寒い夏の日の午後にて


――この作品はフィクションです――


朝から水の滴る音、落つる音。シャワーの頭のお出ましか?変わらない朝日は窓ガラスで変色して、ボクの鼓膜に叫んでくる。目覚まし時計を、右手で止める。それでも遅い朝には変わらない。寒い。それが感想。家の外では、普遍性が打ち破られているようだが、ボクの知ったこっちゃ無い。


「いつになったら、元の夏がやって来るんだ?」
隣に座るヤツに愚痴った。そいつは俺の方を見るなり、ニコリと笑った。無言で笑った。
「笑うだけか?」
皮肉っても、何も変わらない。そのままブランチを食う。やれやれ、家の中にまでは、その普遍性は破られていないようだ。


ボクは“題を課す”モノが嫌いだ。それが生業だとは言っても、“生を学ぶ”事も無かったのだから、それ相応の能力に欠けている事を、皆が知るべきだ。目を閉じて、耳も塞いで、でも生意気だけは吐く。殺伐とした世界を生き抜くための知恵か?しゃらくせぇヤツらめ。今に見ていろ。俺は“大きな物”となってやる。


いつだったか、子供の頃、疑問を持った事がある。空はどうして、青から赤へ、そして夜の世界がやって来るのか?今なら答えられる。元々空は青いんだ。でも時間が経つたびに、そいつを憎む夜の住人達が、うなじ掻っ切り、始末し出すんだ。夕焼けは空の鮮血だ。そこへ夜が怒り出す。急いで隠して、何も無かったかのように振る舞い、彼らを制裁して、全てを治し、朝焼けで血を洗い流し、元に戻す。だから“黄昏”って言葉が生まれたんだな。“誰彼”、即ち“ホシは誰だ?”ってな。


外の世界も変わっちまったな、俺も変わっちまったな。


夜の制裁が行われる。その様子を公開はしない。だから雨が降る。しゃばしゃばと降る。気味の悪い月の赤色だけが、この部屋を照らし出す。赤く光る月面に、この童の姿がくっきり映し出す。この星と同じく、寒い寒い世界に映し出される。薄い薄い冷気のフィルターも、周りのヤツらも、もはや信用ならねぇ。全てが降り注ぎ、全てが切り裂かれ、全てが終結よ。そしたら誰も、文句は言えない。


さんざん怒って、ボクは寝ていた。
少しずつ、少しずつ、普遍性は壊されていく。


――この作品はフィクションです――

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