16日(土)
今日はユイちゃんとグータラ神様の2人を連れて、町へ出掛けた。
両手に花だと、クラスメイトに見つからないかドキドキしてしまう。
ユイちゃんはやっぱり可愛いな。
あんな笑顔を見せられると、俺の顔も綻んでしまう。
同時に、財布の口も綻んでしまう。
荷物係も買って出てしまった。
それにしても、まさか彼女の方から、俺の飛び入り参加を喜んで貰えるとは思わなかった。
もしかしてユイちゃん、俺に気があったりして?
17日(日)
昨日買ってあげた服を着て、フォルトゥナが俺に絡んできた。
どうやら自慢したいらしい。
試着室で十分見たのに。
とりあえず褒めてみると、彼女はまるで子供のように喜んだ。
そして猫みたいに、喉でゴロゴロと鳴いてきた。
充分にテンションが上がれば、人間でもあんな芸当が出来るのか、と感心する俺。
……フォルトゥナは俺に懐いているのか?
それとも嫌っているのか?
最近分からなくなってきた。
18日(月)
だんだん授業に対する熱意が無くなってきた。
よくもった方だぞ、と先輩達に言われる。
19日(火)
朝が辛かったので、授業を休んだ。
20日(水)
雨が降ってたので、授業を休んだ。
21日(木)
昨日は休んだから、授業を休んだ。
22日(金)
なまけっぷりの酷さに俺は、フォルトゥナに怒られた。
まさかこいつから、それを指摘されるなんて……。
どうにも家にいられなくなった俺は、朝っぱらから大学へ足を運んだ。
途中、橋の下の段ボールハウスが目に入ってきた。
……頑張ろう、と思った。
23日(土)
最近は恐いニュースばかりだ。
知らない男に襲われたり、自分の子供に刺されたり、親が火を放ったり……。
身近な人が犯罪者になる時代になったか。
大声で言ってみた。
ビンタされた。
フォルトゥナに。
24日(日)
夜はカレーを食べた。
その時、ふと気付いた事がある。
俺はいつでもルーを左にして食べている。
だがフォルトゥナは右にして食べていた。
ルーの位置でしばらく大喧嘩になった事は、さすがに大人として恥ずかし過ぎるので、日記に書かないでおこう。
25日(月)
朝から雨が降っていた。
この日記を書いている今もまだ、雨はやんでいない。
ジメジメシトシトジメジメシトシト……。
よくもまあ、毎日降っていられるよな、雨よ。
26日(火)
大学で姉さんにあった。
サークル無しで話をしたのは、今日が初めてかも知れない。
レポートに追われている筈なのに、優しくしてくれる姉さん。
やっぱり姉さんといると、心が癒されるな。
27日(水)
今日、実家から仕送りが届いた。
この1ヶ月間を無事に過ごせたと思うと、涙がちょちょ切れそうだ。
早速お小遣いをせびってくる神様。
その返事に、コメカミを苛めておいた。
悪いな、フォルトゥナ。
お前のお小遣いは、俺の拳だ!
28日(木)
俺には、特に仲の良いサークルの友達がいる。
名前を書くのは癪なので、あだ名である「チゲ」を使う事にする。
チゲが恋をしたのだ。
相手は、同じゼミにいる人だとか。
告白はまだしていないらしい。
恋する男の神頼み。
告白に備えてチゲは、近くの神社で500円分祈ってきたらしい。
新宮神社の事だろうな。
俺もあそこには、散々お世話になっている。
ご利益がある場所だから大丈夫だろ、と安心させておいた。
家ではフォルトゥナが、500円を手にご機嫌だった。
なんでも臨時収入が入ってきたらしい。
あいつの500円か?
まさかな……。
29日(金)
チゲの恋は実った。
これでしばらく、惚気話に花が咲くな。
やっぱりあの神社は凄いな。
どんな願いもアリじゃないか。
ちなみに、昨夜はそのまま一緒に過ごしたらしい。
ゆうべはおたのしみでしたね。
30日(土)
今更だが、ある疑惑が浮上してきた。
フォルトゥナは、本当に神様なのではないだろうか?
その根拠ならいくらでもある。
第1に、ろくに外に出ないくせに、5円や10円など、やたら小銭ばかり所持している事。
第2に、俺が神社に寄った時は、独り言まで正確に知っている事。
第3に、奇跡を起こす、と宣言すれば、次の日には必ず何かが起こる事。
これからしばらく、フォルトゥナの生態を観察するべきだな。
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