1日(火)
少女は口が悪い。
そういう個性なのか、俺が嫌いなのか。
それとも神様を名乗る奴は、決まってこんな感じなのか。


礼儀を知らない青二才を懲らしめるため、家から追い出してみる。
今に見てなさい、みたいな事を言って、彼女はどこかへ行ってしまった。


運命だか神様だか知らないが、そんなに偉いのなら、俺の運命の人でも連れてきてみろ。


2日(水)
明日から2日間、サークルの新入生歓迎コンパだ。
今日はもう寝て、明日に備えよう。


それにしても今年は、1人も女の子が入ってこなかったらしい。
ショック。


3日(木)
奇跡が起こった。
俺の実家の隣に住んでいたサヤカ姉さんが、このサークルの先輩だった。


姉さんはいわゆる幽霊部員で、だから今まで気付かなかったのだ。
今日などは気紛れで、たまたま参加したらしい。
何せ他の先輩達が驚いたぐらいだ。


まさに奇跡。


4日(金)
遊び疲れた。
でも姉さんがいたからか、そんな事に気付かなかった。


本当に疲れた。
今日はもう寝よう。


5日(土)
姉さんとの再会を、壁のおみくじに感謝していたら、あの女の子を思い出した。
俺から追い出したとはいえ、少し心配。


6日(日)
ゴールデンウィークまじすげえ。
まだ休みってすげえ。


外で財布をぶちまけてしまった。
いくら探しても生徒証だけ見つからない。


明日から大学なのに、どうしよう。
ショックだ。


7日(月)
生徒証は落としたら再発行しなきゃいけないらしい。
カード1枚になぜ数千円もかかるんだろう。


もう少し待ってみよう。
心優しい誰かが拾ってくれた上に、俺のもとまで届けてくれる事を信じて……。


8日(火)
心優しいお隣さんが作りすぎて余ったカレーをお裾分けしてくれるような、運命めいた事でも起こればいいのに。


9日(水)
奇跡が起こった。


生徒証が見つかった。
拾ってくれたのは、以前このアパートから出てきた、あの女の子だった。


何とその子は今日から、このアパートの管理人になると言ってきた。
そうか、あのお婆ちゃんの孫だったのか。
その挨拶の途中、生徒証の顔写真を見て、俺に気付いたようだ。


ユイちゃんは頑張り屋さんだった。
良い管理人になってほしい。


10日(木)
またフォルトゥナがやって来た。
自慢げな顔がイラッとくる。


フォルトゥナは、約束通り運命の人を連れてきた、と言った。
何でも、姉さんやユイちゃんがそれなんだとか。
運命の人が2人いる事を尋ねたら、運命の人を2人も作るな、と叱られた。


それはいいのだが、フォルトゥナの狙いはやはり、俺の家に居候する事だった。
もう面倒臭い。
心優しい俺はしばらく、彼女を家にあがらせる事にした。


何なんだこいつは。
新手のストーカーか?


11日(金)
一晩掛けて結論を出した。
フォルトゥナは新しい泥棒かも知れない。
試しに貴重品を、部屋のあちこちに隠しておいた。


冷蔵庫の中身だけが綺麗サッパリ無くなった。
間違い無い。
こいつはこの家を乗っ取るつもりだ。


まぁ、我が家のコックをしてくれるのは嬉しいけど。


12日(土)
フォルトゥナは凄い奴だと思う。
干からびたキャベツが、まさかあんな美味い料理に化けるとは。


俺は今日も、財布を隠す。
これはこれ、それはそれ。


13日(日)
冷蔵庫の中を空にしたのは誰だ?
……フォルトゥナだ!


14日(月)
俺の漫画を読むのは誰だ?
……フォルトゥナだ!


15日(火)
何かにつけて偉そうな言動をするのは誰だ?
……フォルトゥナだ!


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