16日(月)
どうやら俺が、クラスで一番のレポート経験者らしい。


どうでも良いけど「食堂」は凄く便利な施設だと思う。


17日(火)
昼寝をしてもノートを見せてくれる奴がいる事の、何と幸せな事か!


18日(水)
昼間で寝てても講義に間に合う事の、何と幸せな事か!


19日(木)
下宿先に帰ってきても誰も迎えが無い事の、何と幸せな事か!

……泣ける。


20日(金)
忘れてしまいそうだから、ここらでひとつ、詳しく書いておこうと思う。


今俺が住んでいるのは、昔ながらの安っぽいアパートだ。
鍵1つあれば、簡単に侵入できる。


大学からは少し遠いが、とにかく家賃が安い。
値段までは書かないが、ここが無ければ俺は今頃、泣きを見ている筈だ。


……今日、大家さんから、俺の隣の部屋に空き巣が入った事を知らされた。
俺はいつも窓まで鍵を掛けていたから、何も盗まれなかったらしい。


これからも戸締りだけは続けていこう、と心に固く誓った。


21日(土)
買い物の帰りに、俺はあの子を見かけた。
同じアパートから出てきたから、多分ここに住んでいる子だと思う。


こんなオンボロアパートに、あんな可愛い子がいたのか。
何だか毎日が楽しくなってきたぞ。


……俺って単純だな。


22日(日)
生まれてきてゴメンなさい。


少し遠出したら、また迷子になった。
まだ森の中なのに、空はすっかり暗くなって……。
あれはもう「迷子」ではなく「遭難」だった。


ふと見えた光を目指すと、そこはあの神社だった。
どうやら、山を1つ乗り越えていたらしい。


俺は真っ先に、手洗い用の柄杓で、その澄んだ清水を飲み干した。
罰当たりな事をしたな、と思う。


帰り際、俺は100円玉を賽銭箱に投げ入れた。
もう1枚追加しておいた。


どうやら、おみくじを壁に貼るのは効果抜群なようだ。


23日(月)
すっかり家事をしなくなった。
食堂で夕飯を食べてから帰る癖がついている。


部屋の中が散らかり始めてきた。
今さら掃除をする気にもなれない。


誰か部屋に、家事や掃除好きがいれば良いのに。


24日(火)
結局サークルに入る事にした。
このままだと、ただダラダラと生きてしまいそうだからだ。


少し遅い参加にも関わらず、皆から歓迎された。
これならすぐに馴染めそうだ。


そういえば、入学からもうじき1ヶ月経つのか。
ほんの少しホームシックになってきたのは、ここだけの秘密だ。


25日(水)
今日は週に1度の、午後がフリーの水曜日。
たまには自分で昼飯でも作ろうと思ったけれど、結局いつもの食堂へ。


だって便利なんだもの。
確かに食費はかさむけど。


26日(木)
サークルで何人か友達が出来た。
明日はそのメンバーで、小さな飲み会を開く事に。


俺は酒に弱い訳では無いが、念のためウコンを用意しておこう。


27日(金)
今晩は遅くなりそうだから、先に日記を書いておく。


今晩の飲み会は、サークル仲間のマンションで開く事になった。
皆で一緒に出掛けるから、迷子にならずにすみそうだ。


今までの俺にとって1人でいる事は、自由でいられる幸せそのものだった。
でも今は、やっぱり誰かと喋っている方が幸せのように思えてきた。


……俺も頑張って、彼女の1人でも作ってみようかな。
そんな願いを叶えてくれるように、壁のおみくじに三拝してから出掛けよう。


28日(土)
あたまいたいねる


29日(日)
光を見た。
蛍のように妖しげな光が、俺のそばに現われた。


それらは俺の布団の傍らで、どんどん人の形に集まっていく。
いや、最後には本当に人間になった。
知らない女の子が、俺の部屋に現われたのだ。


少女は俺より年下だった。
高校生くらいかも知れない。
もし彼女が俺と同じ高校に通っていたら、構内一の美少女として崇められていただろう。
それ程少女は可愛かった。


彼女は口を開いた。
私は運命を司る神「フォルトゥナ」、あなたの願いを叶えに来た、と。
俺の家に神様が訪れてきたのだ。


俺は丁寧に、その子の首根っこを掴み、外に捨てた。
どうやらまだ二日酔いが治っていないらしい。
ドンドンと玄関を叩く音も聞こえる。
早く薬を飲もう。


30日(月)
二日酔いも治り、久し振りに外に出てみた。
玄関先に女の子が座り込んでいた。
すっかり忘れていた。


家に帰らせようにも、家は無いと言い張る。
もちろん俺は、その言葉を信じていない。


だからと言って、彼女をまた野宿させる訳にもいかないだろう。
とっても優しい俺は、一晩だけ泊めてあげる事にした


そのお礼にと作ってくれた夕飯は美味しくて、懐かしくて、思わず涙を流していた。


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